20年間、それを求め続けている。

初めてのお題参戦。テーマは「#好きだった給食メニュー」

Oisix特別お題キャンペーン「好きだった給食メニュー」

Oisix(オイシックス)×はてなブログ 特別お題キャンペーン
by Oisix(オイシックス)

 

小学6年生の1学期までは大阪で過ごし、2学期から神奈川の学校に転校した私。その一品との出会いはさほど時間が掛からなかった。
 
私は小学生の頃は給食を残すのが嫌で、割と少なめにいつも盛ってもらっていた。特に主食となるご飯・パンは他の生徒の半量程度で済ませているほどだった。その日の給食の主食は、見たところ食パンだった。食パン1枚を給食のおかずと共に食べ切るなんて無理だ。私は配食係の子に「半分にしてほしい」と伝えると、その子はすごい剣幕でこう言った。
 
「絶対美味しいから1枚食べて!」

 

ただの食パンでは無いのか。もう一度食い下がってみるものの、「大丈夫だから!」と念押しされ、渋々1枚受け取った。本当に食べ切れるのだろうか。残す未来しか見えない。気乗りしないまま、他のおかずを受け取り自分の席に戻る。いただきます、と挨拶の後、さてこのパンどうしようか…と思いながら牛乳にストローを差しながら考えていたら、その配食係の子(たまたま席が近くだった)が「食べてみなって!」と催促してきた。お、押しが強い…と思いながらも食パンに手を伸ばす。食パンの端っこを齧ってみた。
 
…美味しい!?
 
ふわりと口の中に広がるバターの香り、食感はサクッと香ばしく、しかししっとりさも感じさせる。バターの甘みが口一杯に広がれば、私は気付かぬうちにもう一口齧り付いていた。
 
「美味しいでしょ?」
 
そう尋ねてきたその子に、私は笑顔で首を縦に振る。「だから言ったじゃん!」と自慢げな表情をしたその子を見ながら、「私の知らないものが、まだまだたくさんあるんだ」と少しワクワクしたのは20年前の記憶。
 
『バタートースト』
 
それがその食パンの正体だった。一般家庭でやるような、トーストにバターを塗ったと言う安易なものではなく、パンの耳にまでしっかりバターが染み込んだそれは、家で何度試しても成功しなかった。あの時食べた感動が蘇ってこない。焼く前にバターを塗ってみたり、焼く前と焼いた後に二度塗りしてみたりと色々試したが、全く再現されずに今日に至っている。
 
そしてこの給食メニューについて、給食が話題に上がる度に友人・知人に尋ねてみても、みんな揃って「知らない」と首を横に振るのだ。家族でさえも知らないと言う。ただのバタートーストでは無いことを訴えても、その感動を共有してくれる人が居ないこの切なさを20年間味わい続けている。
 
でも、私が神奈川に転校になって、初めて「良かったこと」と言えたのは、そのバタートーストとの出会いだったことは間違いない。あの時、私を止めてくれたあなた。本当にありがとう。