縁が切れても明るい未来を願う人がいる

ご機嫌よう、みずほです。久しぶり過ぎるブログ更新です。
今日はなんの取り留めもない思い出の話。
思い出と言うより、記憶という方が正しいお話。


いつも、不思議なタイミングで思い出す顔がある。それは「段ボールを解体している時」だ。その顔が誰なのかと言うと、私がまだ大学生だった頃、初めてのアルバイト先で出会った人。バイト先の先輩ってやつだ。……あぁ、女性です。甘いお話とかはご期待なさいませんよう。

 


初めてのアルバイト。それは家からそう遠く離れていない場所にあるドラッグストアだった。親に「とりあえずバイトをしろ」と言われ、渋々選んだバイト先。バイト先自体にこれと言って思い入れは無く、今ではとんと行かぬ距離にある。……まだそこに在るのかさえ知らない。あの辺、地味に再開発が進んでいた様だから、もしかしたら無くなっているかも。


そんなことはどうでも良くて。
いつも思い出すのは決まって『私がカッターで指を切った時の話』だ。段ボールを解体する作業なんてあまりしたことが無かった箱入り娘……って訳でもないのだけど、単純に不器用が服着て歩いている様な人間だったので、不注意に他ならない。
店のバックヤードが倉庫兼になっていた。そこでひとりで品出しの作業やら、空いた段ボールの片付けやらをやっている最中、カッターの刃の向きを間違えてうっかり指を切ってしまった。一瞬のことだったので切ったことに気付かず作業を続けていたら、気付けば血が流れている。あぁ、やってしまったな……と思いつつどうしたものかとぼんやり考えながら指を見ていたら、偶然バックヤードに入ってきた彼女が私の不審さに気付いたらしく「言えし!」と笑いながら絆創膏と消毒液を持ってきてくれた。そして私に段ボールの解体時のコツを教えてくれた。


たったそれだけだ。そこで記憶が終わっているのだ。その後何をしたのか、どう言うやりとりをしたのかは全く覚えていないのに、彼女の『世話の焼ける後輩に向かって笑った顔』だけが鮮明に脳裏に残ったまま、あれから十数余年を生きている。今でも段ボールの中身を出して、解体をしようとハサミ然りカッター然りを手に取ると、教えてもらったやり方で解体をしていく。そしてあの時の笑顔を思い出す。もうあの時みたいに指を切ってしまうこともない。


この話はオチなんてものは無くて、本当になんの取り留めも無い記憶のお話なのだけど、敢えて無理やりオチをつけるのだとしたら。
『誰か』と交わした大したことない一瞬は、その『誰か』の心の中で生き続けることが稀にある。悪い記憶であれば自分の心を苛み病ませる一因にしかならないが、良い記憶であればその人が望んだ『夢』も覚えているし、その人が教えてくれたことは今でも生きていると断言出来る。


だから祈ろう、十数余年も昔にお世話になった貴方が夢を叶え、自分の道を進んでいますように。